12年前、水彩画を始め、動物の絵を描こうと天王寺動物園に行った。
暇を見つけては、何度も何度もかよい続けた。
最初は無視していた動物達も、僕が本当の
日本男児の優しさを持つ紳士だと気付いたらしく、
それぞれの動物なりに、すばらしいポーズを
とってくれるまでになった。
ヒグマ・月の輪グマ・マレーグマは立ち上がり手を振った。
チンパンジーは自分の糞を投げてきて、笑いながら拍手をした。
動物園のどこにいても、動物達の視線を感じるようになった。
人々から「天王寺のムツゴロウ」というニックネームで
呼ばれるようになり、
自分自身も否定する必要がないと思っていた。
たまたま天王寺で空き時間があったので、
久しぶりに動物園に顔を出した。
20頭ほどいたヤギ全部に、
1頭1万円分のエサを自腹で食べさせている、初老の紳士が居た。
ヤギは紙を食べると言うが、なんと1万円札を食べさせていたのだ。
ヤギ達もうれしいらしく、数分で20万円を完食した。
この方こそムツゴロウと呼ばれるのに相応しい人。
少しの間でも、
自分が「天王寺のムツゴロウ」と錯覚していたことを、後悔している。


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