僕の中に、もう一人の人格が存在する。
名前を『ハルク』といい、とても凶暴な男だ。
日本酒なら一升を超えて呑み続け、感情が高まり、
心拍数が200を上回ると姿を現す。
長年IT企業の社長をしているのも、感情の高まりを抑える、
すなわちハルクを閉じ込める修行と言っても過言ではない。
修行のお陰かここ10年、ハルクは一度も姿を見せなかった。

深夜2時半、日本酒を二升近く呑んで帰宅したこの日、
いつものように郵便受を開けると例の新聞が入っていた。
この瞬間、毎晩家に押しかけられ、おでんの後始末をさせられ、
休日も無理矢理起こされ、『新聞を止めてほしい』の訴えも
無視し続けられた攻撃が、走馬灯のように駆け巡り、
10年ぶりにハルクが登場した。

翌日から新聞はピタッと止まり、おばさん達はすれ違っても、
話どころか、目も合わさなくなっていた。

((あとがき))
みなさん、最初はいらない新聞をとってあげた僕のことを、
キジと思ったことでしょう。
しかし、何度断っても、新聞を入れ続けたおばさん達が、
最後はキジになったのです。

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